【楽曲情報・レビュー】逆さまのLady/三月のパンタシア

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目次

楽曲情報

逆さまのLady

「オトメフラグ 〜遊星高校 前夜祭〜」テーマソング

歌唱:みあ(三月のパンタシア)

作詞:yuiko

作曲・編曲:堀江晶太

Guitar:yu-ya(vivid undress)
Piano:柴崎洋輔
Drums:ゆーまお(ヒトリエ)

Recording&Mixing Engineer:諏訪桂輔
Recording Studio:Studio MSR

Mastering Engineer:山崎翼
Mastering Studio:Flugel Mastering

A&R:枦山貴信・石田菜々美(SACRA MUSIC)
A&R Desk:大森はるみ(SACRA MUSIC)

リリース日:2020年5月25日(配信・フルMV) 2020年9月30日(アルバムリリース)

入手方法

配信

フィジカル

「ブルーポップは鳴りやまない」
Tr.4収録(オフボーカルなし)

最高の文脈曲

まずは、「逆さまのLady」を作詞された”yuiko”さんを紹介します。

アニメ「きんいろモザイク」OPテーマ「Jumping!!」をはじめ、鬼頭明里さん、アイドルグループ「サンドリオン」など、様々な作品・アーティストに歌詞を提供されている作詞家でもあり、自身でも楽曲をリリースされていたりと、アーティスト活動をされている方です。

楽曲派プチインフォメーション
話は逸れますが、サンドリオンという言葉が出たので…
「サンドリオン」の「Never Give Upをもう一度」という楽曲は明らかに堀江曲をリファレンスにしていて、実際に作曲者の方(Dizさん)は熱烈な堀江晶太フォロワーの方なので、好きな人は必ず刺さると思うので聴いてみてください♪

そして、「サンドリオン」の最新曲「Familiar base」は作詞・作曲:渡辺 翔さん 編曲:田中秀和さん(MONACA)という、クレジットオタ・楽曲派もビックリ!の凄すぎコラボなのでぜひ聴いてみてくださいね♪

そして、”yuiko”さんは歌い手「ゆいこんぬ」さんとしても活動されていました。

また「逆さまのLady」の情報解禁を機に「kemu」が「堀江晶太」と公言した2017年5月31日(kemu8888の変)のように、ゆいこんぬさんのアカウントで自身の別名義を紹介されました。

https://twitter.com/yuikonnu/status/1217031976986673152
https://twitter.com/yuikonnu/status/1217031978878296065

そして、ゆいこんぬさんは「拝啓ドッペルゲンガー」「六兆年と一夜物語」「地球最後の告白を」といったKEMU VOXX楽曲を歌唱されてきました。

https://twitter.com/yuikonnu/status/871292414329143296

今まで一ファンとしてカバーしてきた楽曲のクリエイターと、同じ作品制作を共にし、そしてその作品を機に自身の別名義で告知する。

これは「文脈」以外の何物でもありません。「文脈的価値」です。This is 文脈です。

筆者は「逆さまのLady」を文脈曲と位置付けます。

「文脈曲」とは?
文章の流れの中にある意味内容のつながりぐあい。多くは、文と文の論理的関係、語と語の意味的関連の中にある。文章の筋道。文の脈絡。コンテクスト。
(https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%96%87%E8%84%88/ より引用)

というのが「文脈」の一般的な意味ですが、筆者含め数多くのオタク・ミュージックラブァーズは「楽曲の裏に描かれているストーリー」を文脈と言います。

例えば、堀江晶太楽曲史上屈指の人気を誇りつつ ”アイドルソング史上最強の文脈曲” と称される 「夜明け Brand New Days/ベイビーレイズJAPAN」を思い出してみてください。

武道館公演を機に見えた風景をもとに作られ、一時期ライブで披露されない時期もありながらも、だんだんと楽曲が育っていき、解散した今でも多くのアイドル・シンガーに歌い継がれる。

もちろん、すべての楽曲に文脈があり、聴いた方それぞれに文脈がありますが、その中でも強いバックグラウンド・ストーリーを感じさせるものを「文脈曲」と位置付けます。

yuikoさんがなぜこの作品の作詞に携わられたのかは不明ですが、三月のパンタシア にはPENGUIN RESEARCHやLiSAさん、米津玄師さんなどを手掛ける「長谷川 “SPARK” 洋輔」さんなど、数多くの優秀なスタッフさんが関わられていたりしますので、そのような粋なクリエイター・マリアージュが出来たのではないでしょうか?

これは考えすぎだとは思いますが、2番Bメロの「イジワルな 神様なんていらない」というフレーズに、”神様”と”祈り”をテーマに物語を紡いだKEMU VOXXのアレコレを感じてしまったのは筆者だけでしょうか?

「文脈」をより鮮やかに描く 鮮烈で美しい歌詞

「熱い文脈」に負けない、味わい深い歌詞を”yuiko”さんは描かれています。

この楽曲はイベント「オトメフラグ 〜遊星高校 前夜祭〜」のテーマソングとして制作されています。

「オトメフラグ 〜遊星高校 前夜祭〜」の説明

遊星高校が誇る3大イベントの一つ、「遊星祭」がいよいよ明日に迫ってまいりました。
本日はそれに先立ち、前夜祭を実施いたします。前夜祭では、飾りや出し物の最終確認はもちろん、
本番当日にいらっしゃるお客様の立場となって実際に出し物を楽しんでみましょう。
開始のチャイムを合図に、校内を散策し、様々なイベントに参加してください。
そして終わりのチャイムがなる時まで、全力で前夜祭を楽しんでください。
みんなで明日の「遊星祭」を成功させましょう。

(https://news.yusei-ed.jp/%e3%82%aa%e3%83%88%e3%83%a1%e3%83%95%e3%83%a9%e3%82%b0-%e3%80%9c%e9%81%8a%e6%98%9f%e9%ab%98%e6%a0%a1-%e5%89%8d%e5%a4%9c%e7%a5%ad%e3%80%9c/ より引用)

残念ながら、このイベントは昨今の情勢により延期してしまいましたが、とても楽しそうなイベントですね♪

脆く切ない恋心を「夢」と例えた、”刹那的恋愛観”を上手く描いた、まさに甘酸っぱいラズベリーのような味が残る歌詞です。

胸躍るような、恋する人とのふれあいを楽しんでいる自分自身を「逆さまの自分」と例える、まさにyuikoさんでしか描くことのできない情景・歌詞です。

「止まらない」から「届かない」へ、そして「守りたい」「感じたい」「溺れていたい」と変化していく主人公の心情変化、そしてラストのサビで動き始める…本当に感情移入して、心から頑張れ!と思ってしまいます。

堀江氏の作詞ももちろん好きですが、yuikoさんの作詞もとても好きになりました♪

みんな大好き “ピアノメインの堀江曲”

質問です。

皆さんは、どのようなルートで「堀江晶太楽曲の虜」になられましたか?

PENGUIN RESEARCHの攻撃的なサウンドから虜になった、KEMU VOXX時代からファンだった…など様々かと思われますが、「キスのひとつで/佐咲紗花」をはじめとした、エロゲソングから虜になった方もかなり多いかと思われます。

「逆さまのLady」は「エロゲソング派」の堀江ファンには必ず刺さる楽曲、逆に言えば大体の人が好きな曲かと思われます。

それを裏付けるかのように、数多くのファンが「逆さまのLady」を試聴した瞬間に”神曲判定”をされています。一部を掲載します。

https://twitter.com/penguin_yusuke/status/1263046433952854018

この曲では、終始ピアノの美しいサウンドが楽曲を下支えしています。

ボーカルのみあさんが映し出す、明るくも儚い情景に絡み合うかのようなピアノ伴奏。

コード進行自体、シンプルに進んでいる印象があるので、リボンを結ぶかのような繊細なピアノのフレーズを聴くたびに、混じりけのない綺麗さに心が高まります。

特に、イントロのピアノ連弾は、三月のパンタシアのメジャーデビューソング「はじまりの速度」を感じさせます。

はじまりの速度
アニメ「キズナイーバー」エンディングテーマ
作詞:岡田麿里 作曲・編曲:ARCHITECT

※ARCHITECTは堀江氏の別名義です

もちろん、「はじまりの速度」はギターの連打的な奏法で、楽器こそ違えど、同様の期待感を感じさせます。

この手の「はじまりの速度」の系譜を継ぐ堀江曲は、かなり久々ですので、ある意味新鮮な感覚を味わえます。

そして、「はじまりの速度」と比較することで、三月のパンタシアの音楽性の変化を味わうことができるのです。

“三月のパンタシア”の音楽はこう進化した

現在に至るまで、ボーカロイドPをメインに起用し続けてきた「三月のパンタシア」ですが、その音楽性は少しづつ変化を遂げています。

今回は、堀江晶太速報ですので、「はじまりの速度」と比較して語っていこうと思います。

もちろん、アニメタイアップか否かなど、いろいろありますが、同系譜の曲でありながらも、サウンド面で変化が生じています。

三月のパンタシアのファン層は、個人的な感覚だと、現在は高校生~中学生、大学生が多い印象があります。

それは実際に作品の展開に結びついており、それこそ「はじまりの速度」の時期では、アニメタイアップをたくさん手掛け、所謂「アニソン然」とした楽曲が多く見られました。

筆者は「アニソン」という音楽のジャンルはないという信念を持っていますが、それでも楽曲の雰囲気、例えばAメロ・Bメロ、そして盛り上がるサビ!という伝統芸能的な展開を聴くと「アニソンだなぁ」と思ってしまうのは分かって頂けると思います。

そんな中、2018年頃から、ボーカルのみあさんが書き下ろした小説やストーリーを軸とした楽曲展開を始めました。

そんな中で現れたのが、堀江氏が作詞・作編曲を手掛けた「三月がずっと続けばいい」です。

この曲、そして同時期にn-bunaさんが制作された「青春なんていらないわ」で一気に「三パシブーム」は過熱していきます。

一部で「n-buna」と検索すると、堀江氏の顔が出る!という現象が起きています。

これは、本当になぜだか分かりません。ナブナさんは堀江さんではないことを、念のためお伝えします。

ダイスケリチャード氏のイラスト・えむめろ氏の映像に加え、基本コンセプトは変わらずとも、確実に初期から変化した音楽。

それらがすべて、現代の若者の音楽シーンとフィットしたといっても過言ではありません。

初期からのサウンドの変化としたら、より軽快に、より身近な音楽になったといえるでしょう。

より軽快に。もちろん、今回の「逆さまのLady」もサビの高揚感と壮大感は圧倒的なんですが、楽器の数を減らし、ギター・ピアノ・ベース・ドラムとボーカルというバンドスタイル、スマートなスタイルの中で表現されている壮大感であり、壮大さの中にも軽やかなテンポ、スキップしたくなるような雰囲気を感じさせます。

そして、より身近な音楽、それはふと口ずさんでしまうようなフレーズ、楽器が出来たらちょっとコピーしたくなるような親しみやすさです。

筆者が以前見かけた「堀江晶太評」の中でふさわしいものを掲載させていただきます。

https://twitter.com/shoten_san/status/1245650688094265344

このようなバンドスタイルの軽妙な楽曲では「キラーフレーズ」が大きな役割を果たします。

口ずさみたくなるようなフレーズ、この曲ならイントロのピアノのフレーズや、サビの「止まらない~♪」というところ。楽曲と記憶を一致させるキーフレーズを生み出すことに長けている堀江氏だからこそ生み出した楽曲であり、三月のパンタシアの音楽性をより強くする一助となっているでしょう。

「三月のパンタシア」が登場すると同時に、アーティスト自体の謎を強くして、ビジュアルや映像・音楽、世界観重視でアーティスト活動をするグループが増えてきました。

筆者は、これらのアーティストを「サブカル音楽第七世代」と呼んでいます。

例えば「ずっと真夜中でいいのに。」「YOASOBI」といった「サブカル音楽第七世代」は、どちらかというとダウナーな、闇のある世界観を描いています。現在の主流はこちらです。

そんな中で、音楽性の変遷はあれど、さまざまなタイアップを通して、最初から半径数十メートルの身近な恋愛や友情を描いてきた三月のパンタシアはうまく差別化を図っていると感じます。

「サブカル音楽第七世代」の多様性を感じさせるアーティスト、それが三月のパンタシアです。

やっぱりベースが暴れる

この曲がフル尺で初解禁された(ライブを除く)は5/23深夜のラジオで、2番以降どういう風に差別化していくのだろうとドキドキしながら聴いていたら、いきなり2番Aメロでベースが大暴れしていて“納得”しました。

ベースという楽器は、大体コードに沿ってリズムを奏でる楽器なのですが、めちゃくちゃ上昇します。

そして上昇しきって、キメの部分でミュート。この「堀江式ベースフレーズ滝登り」は、歌詞で表現されている「恋に悩む乙女」の心の動きを上手く表現しているとも感じます。

ベースのフレーズを大暴れさせることはできるのですが、その中でも楽曲の大黒柱としてドシンと構えさせることはかなり難しいです。

「めちゃくちゃ重心座っている大蛇」

これが筆者の思う「堀江晶太のベース」だと感じるのです。

そして、アウトロで最後まで響く重低音。先述の「軽快さ」とは相反することですが、”恋”の甘酸っぱさだけでない、ちょっとした後ろめたさを感じてしまうのは筆者だけでしょうか?

歌詞と共に、音一つ一つが意味を持つ。そのような編曲に長けているからこそ、多くの音楽関係者・リスナーから「編曲の魔術師」と呼ばれる所以だと思います。

ラスサビの大(おお)トゥルエン転調

この曲の聴きどころは、まさにラスサビの転調です。

PENGUIN RESEARCH「近日公開第二章」のラスサビとは少し異なりはしますが、同じような高まりを感じる展開です。

筆者はこのような展開を「大(おお)トゥルエン」と呼んでいます。使ってる人があんまりいないのでみんな使ってね。

大(おお)トゥルエンとは

端的に言えば「最高のストーリーエンド」です。

大(おお)…すごい

トゥルエン…True End(正解のエンディング)

ラスサビに転調させることで、主人公の恋が上手くいかなくても、とにかくいいじゃないか!と思わせる効果を持たせます。大体の人が納得して感動します。

堀江氏は、転調を様々な部分で多用しますが、案外素直な「トゥルエン的」転調をよく行います。

大(おお)トゥルエン転調は、正義です。大(おお)トゥルエン転調する堀江曲、思いついたら追記します(こういうのって、すぐに頭には浮かんでこないものなんですよね…汗)

まとめ

心躍るサウンドに刹那的な恋のスパイスを一握りさせたような、まさに青春の一ページを切り取った楽曲です。

「逆さまのLady」公開に添え、コメントが出されています。

不安や混乱が渦巻く日々の中、音楽をはじめ様々なエンタメに精神的に助けられていることを改めて実感しています。そしてこういう時だからこそ、何か届けられるものがあるんじゃないかと考えて「逆さまのLady」を公開することにしました。

(YouTube 投稿文より)

昨今の情勢により、学校が無かったり、友達などと顔を合わせる機会も減っています。

そんな中、僕たちの心に安心感を与えてくれるのはエンターテインメントです。

部活などをあきらめなければならなくなったり、今まで通りの友情や恋愛が通用しなくなるかもしれない。そんな暗い毎日を過ごしているであろう、三月のパンタシアのファンに、好きな人との恋愛という「普遍的な物語」を綴った音楽は、確実に明日への希望になると思います。

今まで通りの青春が少しでも早く過ごせるように、そして三月のパンタシアのライブがまた開催されるように「逆さまのLady」を聴きながら 夜明けを待ちましょう♪

ふろく:三月のパンタシア×堀晶 楽曲一覧

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濃厚レビューとは

クリエイターが紡いだ1曲に込めた思いは、140字そこらじゃ語り切れない!

筆者が思ったことをツラツラと書きなぐる、限界・音楽記事です。
関係ないことも時々書きながらも、小難しい音楽理論は排除して、とりあえず感覚で、
読み応えと面白さ、読みやすさを追求した、新たな音楽ブログの概念を生み出すべく書いています。

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